日本酒は米と麹と水から作られます。昔からながらのこの伝統の技は、今も杜氏たちに受け継がれ、守られてきています。
では、あの上質の酒は、酒蔵の中で一体どのように作られているのでしょうか。その伝統の世界を皆様にご紹介しましょう。
酒造りに適した原料米は何種類かありますが、とりわけ最適米として認められているのが、「山田錦」です。大粒で、中心部の心白の割合も大きく、タンパク質が少なく、糖化されやすい特性を持っています。
この米を精米にかけ、表面の脂肪やタンパク質の層を削りとります。吟醸酒のような上質酒は米の半分の大きさになるまで削ります。
水は酒造りにかかせない大事な材料です。良質の水が無ければ、良質の酒は生まれてこないとも言われるほど、水の影響は大きいのです。大敵とされるのは水の中に含まれる鉄分で、酒造りに最適な鉄分は含有量の0.02ppm以下とされています。
精白した原料米を洗米し、水に浸して吸水させ、麹づくりに適した保有水分を得られるよう調節します。
その後、大きな蒸し釜に入れ、蒸気を使って蒸しあげます。蒸しあがった米を土間に敷いたむしろの上に運んで広げ、両手でかき混ぜながら米を適温まで冷まします。
冷ました蒸し米を麹室へ運び、麹づくりに取り掛かります。うまい酒造りの鍵はこの麹が握っています。麹の出来映えで酒の質は左右されるのです。
麹づくりで最も気を使うのは温度管理です。麹室は平均室温が34度にもなり、ほかの菌が入ってこないように厳重に管理されています。
繁殖を続ける麹菌の発熱により、麹の温度は変化していきます。杜氏は、温度計で頻繁に麹の温度を点検しながら発酵の調節を行っていきます。
夜中でも2時間ごとに温度を確認し出来具合を確かめる。 麹づくりに要する時間は二昼夜(48時間)。その間、杜氏はほとんど寝ずの番を続けるのです。
できあがった麹に蒸し米、酵母、水を混ぜ、撹拌して「もと(酒母)」を作ります。この「もと」にさらに蒸し米、麹、水を加えてタンクに仕込んで醪はできあがります。
醪も温度管理にはとても気を使います。寒い風にあたって醪が風邪をひくことがあってはなりません。
醪づくりは通常3回に分けて行われます。最初は「初添」、2回目が「仲添」、3回目が「留添」。
このように段階を踏むことにより、それぞれの仕込み時に適した温度で発酵作用を正しく進行させることができるのです。
醪は発酵が進むにつれて盛んに泡を出し始めます。杜氏たちは泡の状態を見て、醪の進み具合を判別します。仕込み日数を重ねると、泡はだんだん盛り上がり、ゆっくりとした動きを繰り返すようになります。
じっと耳を澄ませると泡のかすかな音を聞く事ができます。杜氏と醪の会話がこうして始まるのです。
酒の仕込みでは温度を上げても11度位までで、それ以上あげると酒にはなりません。
醪づくりも、とても厳しい真剣勝負の時間が長く続くのです。
仕込んだタンクの中で1日あたりほぼ1%の割合でアルコール分が醸成され、増えつづけるため、20日くらいで18%位になります。
醪がタンクの中でちょうど良いアルコール分を含んだ状態に達したら、いよいよ搾りがはじまります。
その際、日本酒度も日本酒度計で測定し、適度の数値が得られなければなりません。
搾った新酒は、酒質の確認、調整処理が行われ「火入れ」をされた後、貯蔵タンクに入れられ熟成期間を過ごします。
火入れとは60度の熱で低温殺菌を行い、酒の腐敗を防ぐ技術のことです。
新酒は秋頃まで寝かされ、味・香りともに十分な状態になった段階ではじめて瓶詰めされ、出荷されます。